「共創的見通し(Collaborative Perspective)」

ABCモデル

精神療法や心理療法の世界では、「見立て」という重要概念があります。これは、クライアントの問題や状況を評価し、適切な治療方針を立てるためのプロセスとされています。

クライアントの悩みや不適応の本質や病理水準を、現象学的に、あるいは精神力動学的に、あるいは多面的にアセスメントをし、その本質を理解し、もっとも適切なエビデンスのある治療方法を提供するというニュアンスで使われます。したがって「見立て」は、専門家による専門的なプロセスであり、精神療法や心理療法の効果を最大限に引き出すためには重要という意味で使われます。

ホロニカル・アプローチ」は、「ホロニカル・セラピー」を脱構築したものです。ホロニカル・セラピーは、既存の精神療法や心理療法に関して、内的世界も外的世界も共に扱う統合的アプローチというパラダイムでした。しかし、その後、多層多次元にわたる問題が重層的複合的に錯綜する児童虐待など、「今・ここ」自体の安全や安心が確保されていないようなあたかも戦場のような場での対応を求められる中では、心理療法やソーシャルワークを包摂するような心理・社会的支援のための統合的視点が必要になりました。そうしたパラダイム・シフトから誕生したのが、心理・社会的統合的アプローチとしての「ホロニカルアプローチ」です。この変化は、クライエントという概念も被支援者に、カウンセラーという概念も支援者というより包括的概念によって統合されていきます。

しかし、こうした変容は、「ホロニカル・セラピー」と呼称した頃には、なんら疑問も違和感も抱くことなかった「見立て」という概念が、どうしても馴染まなくなってきてしまいました。ホロニカル・アプローチでは、被支援者の抱える生きづらさのある現象を外在化(可視化)し、外在化された問題に対して被支援者と支援者が共に共同研究的に俯瞰しながら少しでも生きやすい人生の道の発見・創造を協働的関係の中で共創していきます。こうした行為は、支援者という専門家がその持ちあわせている専門的知識によって被支援者の生きづらさの意味を専門用語を使ってアセスメントをするという専門家中心の「見立て」という概念とは、質的に異なることが明らかになってきました。「見立て」という概念は、医療モデルの診断行為の流れを汲む、心理療法を治療と捉えるような治療精神療法や心理療法の世界にふさわしい形で定着してきた概念です。しかし、こうした医療モデル的歴史からくる概念が、被支援者と支援者の共創的関係を重視するホロニカル・アプローチでは、適用しにくくなってきたのです。

そこで新たに「見立て」という言葉を脱構築する形で誕生しかけている前概念が、「共創的見通し(Collaborative Perspective:)」というキワードです。まだまだ別の言葉に変化するかも知れませんが、今のところ、「見立て」よりは、「ホロニカル・アプローチ」にはふさわしいオリジナルの概念が、「共創的見通し(Collaborative Perspective:)」です。ABCモデルでいう適切な観察主体C点から、A点とB点の行ったり来たりの意味を被支援者と支援者が共創的に発見・創造しながら、少しでもより生きやすい生き方の方向の見通しをつけていく行為が、「共創的見通し(Collaborative Perspective:)」です。