
科学的観点から、“こころ”の働きを生理生化学的な現象として記述できます。しかし、この記述は私たちが普段実際に感じている“こころ”の働きとは一致しません。なぜなら、記述の論理と実感の間に、扱っているカテゴリーの明らかな差があるからです。
さらに、科学の土台である物理学の最先端が、原子レベルの窮極が量子論的振る舞いをすることを明らかにした一方で、“こころ”の現象との関連性はまだ何も科学的には解明されていません。
ホロニカル心理学では、科学の現況を踏まえ、主体が感じるものすべてに、“こころ”の現象が関係していると仮説を立てています。ただし、ホロニカル心理学が対象とする“こころ”は、個人内の現象に限定されません。意識、無意識、精神、魂など、さまざまな呼び名がありますが、実感するものすべてに“こころ”の働きがあるとみなしています。
また、ホロニカル心理学の立場は、生物・心理・社会モデル(Biopsychosocial model)、略してBPSモデルとして区別される「心理」ではありません。このモデルは、還元主義的な生物主義的な医学の反省から構築されたモデルです。ホロニカル心理学の立場は、「生物」「心理」「社会」などを区別するときにすら作用す“こころ”の働きを含み、もっと統合的立場から“こころ”の現象を含み学問的に探究していこうとする立場です。
しかし、ホロニカル心理学は汎心論でも観念論でもありません。“こころ”とは見えないが感じるものとして定義していのです。この定義による心理学は哲学でも科学でも宗教でもありません。科学的思考をする“こころ”を扱いますが、科学的な心理学ではありません。宗教を信じる“こころ”を扱いますが、宗教心理学でもありません。哲学をする“こころ”を扱いますが、哲学的な心理学でもありません。何かを感じるところに心理学の樹立が大切だと考えているのです。
ホロニカル心理学は、何かを観察対象として観察しようとする行為のすべてに心理学が成立すると考えています。