家庭内への危機介入による安全で安心できる生活の場の構築の重要性

児童相談所で対応するような子ども虐待による家庭内の緊迫した状況においては、安全で安心して生きられるの構築が極めて重要な課題となります。この目的を実現するためのアプローチは、静謐な面接室や診察室で培われた理論や技法だけでは不十分です。生活現場に直接介入し、混沌とした環境の中でも、安全で安心できる場所を築くための新たな理論と技法の探究が必要になります。こうした支援によって、「来てしまった児童相談所」から、「来てくれた児童相談所」へと変化することが支援目標になります。

安全で安心できる生活の場を得てはじめて、人はトラウマケアによって過去の傷を癒し、日常生活へと戻ることができます。しかし、現在も虐待が続いている家庭では、その家庭自体が危機のとなっており、そこに安全で安心できる基地を築くことが適切な支援のためには不可欠です。この基地を築けない場合、子どもを環境から切り離すことが必要になることもあります。家庭内での適切な支援が行われれば、関係の修復が困難なケースは今以上に減少すると考えられます。

修羅場において安全な場を作り出すためには、全体状況を俯瞰し、時に笑いすら交えながら暖かく包み込む姿勢が支援者に求められます。この包容力が、加害者と被害者の関係を変え、新たな人間関係を築く基盤となります。

修羅場から離れた場所でのケアや治療が行われても、修羅場自体が変わらなければ効果は限定的です。重要なのは、修羅場に勇気をもって飛び込んだ時に、注意喚起型の説得、説明、治療、指導、アドバイスといった態度に代わって、一緒に喜怒哀楽を共にしながらパワーに頼らない新しい共創的な人間関係を築くことです。支援者は、物理的な安全を確保した上で、すべての出来事を受け入れ、温かく包摂する場を生活現場に構築することが求められます。 このような包容力が、加害者と被害者の間のパワーゲームを変容させ、新たな人間関係を築く基盤となるのです。ほどよいい保護的対応が、当事者に内在化されて、虐待関係を変容させていくのです。こうした対応が可能になるためには、それ相当の経験や職場の支えとともに、実践即研究・研究即実践のような根気のよい取り組みが必要になります・。