
過去の出来事に関する記憶の意味や感情的付加が、「今・ここ」の体験の違いによって大きく変化していきます。この事実があるからこそ、過去の外傷体験を塗り変えていくことを可能にします。
厳密には過去など存在しません。あるのは、過去の記憶を含む一瞬・一瞬の「今・ここ」です。しかし過去の出来事に、“こころ”を奪われている人は,「今・ここ」に生きていません。“こころ”、ここにあらずです。過去の外傷体験が、「今・ここ」に生きる時間を奪いとってしまっています。
だからこそ、たとえ過去の危機体験の記憶を包含していようが、「今・ここ」が安全で安心できるという体感を身体の奥から真に実感できる瞬間、過去の体験の記憶を持つクライエントは、「今・ここ」における支援者との真の出あいの瞬間・瞬間の場が、支援者と被支援者を包み込み、生き生きとした実存的体験を得ることが、過去の外傷体験に伴う記憶の意味や感情的付加を変容させていくことを可能にするのです。
強烈な過去の記憶によって時間が止まってしまうクライエントを、「今・ここ」の場に生還できるような支援者の働きかけが大切です。支援者と被支援者が、「今・ここ」という場において、時を忘れて、苦悩を共に分かち合うことのできた瞬間に、真の出会いが生まれます。そうした出あいの場が、時を超えた聖なる時空間となり、苦悩だらけだった人生の記憶を変容させることが可能になるのです。