心理社会的支援者や治療者は、「救済者幻想」に陥るときがあります。この幻想は、特に“こころ”の苦悩に対する支援の場面で問題となり、当事者の主体的な問題解決能力を奪い、問題を悪化させることがあります。
ホロニカル・アプローチの立場から見ると、心理社会的支援の本質は,むしろ、当事者が自己の課題を解決するプロセスを支援し、自己の体験を主体的に確立できる環境を整えることにあります。支援者が「何とかしてあげよう」としてしまうと、かえって当事者はその内的な感覚が希薄になり、自己の問題を乗り越える力が損なわれてしまいます。
支援の根幹には、当事者が自己の問題解決における主体であることを認識し、悩む権利とともに、自ら問題を解決する権利を持つことを尊重する姿勢が求められるのです。支援者が「問題を解決してあげる人」として登場すると、結果的に当事者の主体感が失われ、自律的な成長を阻害してしまいます。支援者の役割は、共に問題を抱え、共に考え、当事者の経験を尊重しながら並走することであり、一方的に解決を提示することではないのです。
この視点から、支援者自身が自己の課題を認識し、弱さを持つことを許容し、支援の場で「助けを求める力」を持つことが必要となります。人間社会は相互依存によって成り立っており、「すべてを自己解決する力」ではなく、「自力の限界を認識し、助けを求める力を持つこと」が生存戦略として不可欠といえるのです。ホロニカル心理学の観点からすれば、支援者が持つべき姿勢は『一緒に助かる、一緒に生き抜く』という覚悟に基づくものといえます。
現代社会において、個人の自律性を過剰に強調する社会では、孤立を深め、助けを求めることが難しくなってきています。その一方で、「助けてあげなければならない」という固定観念に囚われることで、当事者の主体的な経験が阻害されることも起きてしまいます。
重要なのは、主体的な生存戦略として「助け合うこと」の価値を認識し、心理社会的支援においても「共に悩み、共に成長する関係性」を築くことと考えられるのです。