
面接中、または学校、施設、病院等の生活場面において、それまでは身体の奥深くまで刻み込んでいたトラウマ記憶が、何かのきっかけで突如再現され、暴れ出したり、遁走しようとしたり、麻痺反応を引き起こし始めた人が出た場合には、注意喚起を促す指導的助言や身体的拘束によって行動化を制御するのではなく、「今・ここ」に意識を引き戻すような働きかけが有効です。外の景色や事物に注意を向けるように促します。「身体が固まってしまっているね(震えてるね)」「怒れるの?」など、「今・ここ」の身体感覚への焦点化を図ります。ゆったりとした態度や、ときとしてユーモアも大切です。「とにかくお水を飲もう」など、被支援者の個性的特性に応じた対応が必要ですが、意識の切り替え法の工夫がポイントです。「そういえばあれから〇〇はどうなった?」と全く場面の関係のないテーマに意識を切り替えることも「我に返る」ために有効な場合もあります。
命令口調の「落ち着きなさい」「警察を呼ぶよ」「もう暴れないと約束したでしょう」などの注意喚起的指導やパワーによる抑制や拘禁は、外傷体験となった過去の記憶を刺激し、「今・ここ」を、かつてのおぞましい修羅場の世界に引きずり込んでしまいます。それでは、支援者や今この世へのさらなる不信感を強化するだけに終始することになります。
大切なことは、被支援者は、過去の外傷体験の記憶を現在に投影してしまっているため、過去と現在の区別がつくように、“こころ”ここにあらずの状態を「今・ここ」に呼び戻すことです。また、こうした周囲の支援者による適切なホールド体験は、適切なアタッチメントを形成できなかった被支援者自身の自己に取り込まれ、いずれ自己統制感覚の促進につながっていきます。