
ホロニカル心理学では、自己とは固定的な実体ではなく、常に変化しつづける生成のプロセスとして理解されます。自己は、自己と世界との不一致・一致の往還を通して、世界を自己の内に包み込みながら、自らを絶えず再組織化していく存在です。この「自己組織化」とは、自己が外界との相互作用の中で、新たな秩序や意味を生み出していく創造的過程を指します。
しかし、個としての人間の自己が、最終的には死を迎え、世界の大いなる循環の中へと包摂されていく現実を考えるとき、「生きる」とは、死に向かう過程を遅らせることでもあるといえます。では、なぜ自己は死を遅らせようとするのでしょうか。それは、自己が創造的世界から生まれた存在であり、その創造的働きをさらに深化・発展させる使命を担っているからではないでしょうか。生とは、創造的世界が自己を通じて自己を拡張しようとする営みの顕れといえると考えられるのです。
広大かつ無限に変化し続ける宇宙を含む自然世界は、あらゆる生成と消滅を司る「創造的働き」によって支えられています。この働きの中から生まれた自己もまた、限られた生の時間のなかで死を遅らせながら、新たな創造へと参画していく存在です。そして、死後には再び創造的世界の源へと還り、次なる生命や秩序を生み出す一部となるのです。
創造とは、古い秩序を壊し、新たな秩序を組み立てることです。したがって、自己は生の限りにおいて、自らを壊しながらも再構築し続けます。これこそが「生きる」ということの根源的な意味であり、創造のための時間と空間を紡ぎ出す営みでもあります。生とは、創造の場を拓く働きなのです。
世界そのものが自己組織化する大いなる生命体であるとすれば、私たち人間の自己もまた、その一部として世界の自己組織化に寄与しています。つまり、私たちは単に「生かされている」のではなく、創造的世界の深化に能動的に関与しながら、「生きる」ことそのものを通して新たな秩序を紡いでいるといえるのです。