
生きづらさを「ひっかかり感」と平易な言葉に言い換えると、ホロニカル・アプローチは、何らかの“こころ”の「ひっかかり感」を契機に、「ひっかかり感」をミクロの現象からマクロの現象まで様々な角度から丁寧に観察していきます。すると、内的世界から外的世界にわたって観察主体と観察対象をめぐる悪循環パターンが顕在化してきます。しかも頑固な生きづらさほど、多層多次元にわたる悪循環パターンを繰り返すフラクタル構造(部分と全体とが自己相似的な構造)が発見されます。
例えば、重篤なうつ状態などでは、比較的に一般化することが可能な神経・生理学的レベルの問題から、生育歴・生活歴の影響や信念・理念・思想の影響といった極めて個別な問題までが複雑に絡み合あっていることなど多層多次元な問題が明らかになってくるのです。うつ状態というひとつとっても、どのような観察主体から何を観察対象とするかの差異によって、さまざまな悪循環パターンが浮かびあがってくるのです。ここで大切なことがあります。それぞれの観察結果は、それぞれそれなりに有効であっても、どの結果もそれだけでもって、うつ状態をもたらす要因のすべてを説明できるようなものではないということです。
しかしながら次のような仮説も成り立ちます。うつ状態をもたらしている多層多次元にわたる悪循環パターンは、それぞれの層や次元で明らかになった悪循環パターンのひとつひとつの変容を丁寧に促進していけば、いずれ氷が水に、水が蒸気になるような臨界点がやってきて、他の層・他の次元の悪循環パターンの変容を促進することが可能になるのではないかという考え方です。複雑系の理論の世界では、「創発」と言われている現象です。
ホロニカル心理学では、ミクロの問題にはマクロの問題が、マクロの問題にはミクロの問題が包摂されていると考えます。ミクロからマクロに至る多層多次元な現象が重々無尽に絡み合っていると考えられるのです。それだけに心理・社会的支援においては、まずは変容見込みのある「ひっかかり感」を丁寧に扱っていくことが大切と考えられるのです。