自己と世界の出あいの不一致に伴う苦悩が、精神医学的症状として個人病理化され、自己の変容ばかり求めるものとなり、社会(世界)の変革への創造力を失うようなものとして扱われてはなりません。
苦悩は、新しい自己とともに新しい世界の創造の契機とならなければなりません。
苦悩の本質は、内的世界と外的世界の相互浸透領域における不一致にあり、単なる病理的徴候ではなく「存在に関する変容プロセス」にあるといえます。したがって変容に関して、ただ個人の内面変容のみに焦点を当てるアプローチは、世界との共創的関係性を見失わせ、社会構造の変容可能性を封じる危険性を孕んでいます。むしろ苦悩のエネルギーを、自己と社会の境界を再構築する触媒として活用し、両者の共進化的発展を促すことが不可欠です。具体的には、苦悩を個人の責任に帰属させるのではなく、社会制度的文脈との相互形成プロセスとして位置づけ直す実践的枠組みが求められます。