心理相談や心理療法では、疾病、病理、治療という言葉を使った途端、専門的知識を有する立場にある治療者と無知の立場にある患者というパターナリズムが即座に布置します。しかし、治療関係を相談関係に転換し、しかも、病理・疾病の視点を、人生上の苦悩の相談に転換すれば、関係性の民主化・対等化を構築できます。
特に、相談関係における被支援者と支援者の共同研究的協働関係を重視していくと、支援の場での相互作用の中で、さまざまな変容が、相談をする被支援者側だけではなく、相談を受ける支援者側にも起きてきます。
治療における治療者は、事前に定めらている手順と基準によるアセスメントを実施する能力を身につけている必要があります。そしてアセスメントに基づく見立てから、もっともエビンデンスのある治療法を選択し治療を展開していくのが一般的アルゴリズムです。が、しかし、相談では、こうした因果論的線形論的展開はまず不可能です。むしろもっと複雑で非線形論的な展開となり、アセスメントも刻々と変化していく動的で流動的な展開になります。しかもアセスメントや見立て自体が、支援者と被支援者の共同作業として展開することが大切になるのです。
治療は、診察室や面接室など限られた時空間で、特定された症状をめぐって展開しますが、相談は、日常的な場や生活の場でも行われ、かつ複雑な要素が相談の場に持ち込まれます。
治療は、特定の症状を絞り込み、その症状に対する治療方針を治療者と患者が契約を交わすところからスタートします。それに対して,相談では、“こころ”の内・外をめぐるさまざまなテーマが、安全かつ安心できる場で自由に語られ、それらの複雑な絡み合いの中で、まずは変容可能性のあるテーマを対話の流れの中で双方が見つけながら展開することになります。
治療と相談は異なる行為だけに同時並行利用が可能です。例えば、診察室では変化をみせても、実際の生活の場に戻れば、すべて元の木阿弥という場合などでは,診察室での治療だけではなく、生活の場での苦悩を相談の場で積極的に取り扱い、もっと具体的に生き易くなる道の発見と創造が必要になるのです。
相談では、被支援者の内的世界や外的世界にわたる複雑で多声的な心理状態が明らかになります。この複雑な多声的な“こころ”の内・外の状態を、適切な観察主体から自由無礙に俯瞰できるようになることが、新しい人生の生き方の発見・創造につながるのです。