演劇的時空間としての場

 

映画監督法

自己に統合することができなかった直接体験の断片がある場合には、その断片に名を与えて外在化し、当事者自身が名を与えた対象の役割をあえて意識的に演じることが完遂できれば、それまで切り離してきた自己の断片を自分のものとし、自己に再統合することが可能になります。しかしそうしたことをやり遂げるためには、演じる劇場的時空間のが安全で安心できる場であることが必要条件となります。

人は、こうした安全で安心できる劇場的時空間を得ることができると、「今・ここ」において、無意識と意識を含む心の内・外や過去や未来にわたるあらゆる現象を、見るものと見られるもの、演じるものと演じるものを見るものという二重構造の中で、「今・この瞬間」にすべてを統合することができます。そしてこうした統合化は、自己の適切な自己組織化を促進します。

自己と世界の新しい関わり方を能動的に想像しながら自ら演じるとともに、自らが観客となって支援者ととも俯瞰するという行為が、人生脚本の変容をもたらすのです。

出来事に、ただ名を与え識るだけではなく、それを演じきる瞬間に、新たな自己に変容していく体験を自ら体感することができるのです。