スポット法(3)

スポット法のある場面

ホロニカル・アプローチの技法の一つであるスポット法は、言語だけによる面接とは異なり、被支援者の“こころ”の内から沸いてきたものを小物などを使って可視化(外在化)することによって、被支援者と支援者が共に同じ対象を共有することを可能とし、被支援者と支援者の共同研究的協働関係(共創的関係)の成立をより促進するという確かな手応えがあります。

<次にどんな気持ちがでてきますか>と聞くか、<次に何がでてきますか>と聞くかといったように支援者のちょっとした質問の言いまわしの違いだけでも、サークル(コピー用紙の上に記入された直径8~10㎝の円)の中央部に表現されるものが微妙に異なってきます。ましてや、<どんな感情がでてきますか><どんな考えがでてきますか><どんな出来事が浮かびますか><誰のどんな行動が浮かびあがってきますか>と質問を変えるだけでも結果は大きく違ってきます。スポット法は、いかなる観察主体から、いかなる観察対象を選ぶかによって、観察結果が著しくことなってくるという複雑な心的プロセスを被支援者と支援者が共有することを可能とするのです。

被支援者の内的対象関係に焦点を合わせるのか、それとも外的対象関係に焦点を合わせるのかでも結果は異なります。また、内的対象関係と外的対象関係が区別されて沸き上がってくるのか、両者が融合して沸き上がってくるのかなどの特徴も明かになるため、被支援者の観察主体と観察対象の関係性や、心的構造の特徴を見立てていくことも出来ます。

また特定の出来事や陰性の気分に視野狭窄的になって執着している人(ABCモデルでいうA点固着状態の人)に対しては、A点に対して、ほどよい観察距離をもったC点からA点を俯瞰することを促進したり、C点から、A点以外の出来事にも観察対象を切り替えていくことにも寄与します。

スポット法は、被支援者と支援者が、被支援者の“こころ”の内・外の複雑な対象関係のを共有し、被支援者の観察主体と観察対象をめぐって悪循環するフラクタル構造の変容を促進し、対象関係の全体的関係の適切な自己組織化をもたらす上で有効な方法といえます。

スポット法は、視野狭窄的になって悪循環を強迫的に反復しているときに発見される執着の対象をめぐって、悪循環を繰り返している観察主体と対象の関係性の変容をもたらします。見立てと変容の促進が一体化したシンプルな技法であり、誰もが使い易い技法といえます。