個性化の加速化する価値多元化社会

心理社会的側面における自己発達において、生育環境や生活体験の影響を看過することができないことは古くから知られていたことです。

しかしながら、経済格差、情報格差、地域格差がますます拡大化し、かつ価値の多様化・多元化が加速化する現代社会においては、もはや何をもって心理社会的な発達の「普通」とするかの標準化自体が曖昧となり、これまでのような「普通」からの逸脱で持って異常や非定型をアセスメントすることそのものが困難化しました。

家族、学校、会社、団体や地域社会を問わず、あらゆる社会組織において、当たり前の感覚(常識)を共有することが難しくなりつつあるのです。その結果、心理社会的存在としての個性化が当然となってきた現代社会では、統計学的に定められた基準からの逸脱を持って診断する行為自体の科学的根拠が崩れ、下手をすればスティグマの要因とすらなりはじめているのです。

発達の個性化ともいえる現象が加速化する新しい社会が到来したといえるかも知れません。

自己の自己組織化に影響する多層多次元にわたる著しい変化が、自己の発達の多様化・個性化を促進してきたと考えられるのです。

こうした観点に立脚するとき、ここ数十年の児童精神科領域における発達障害の過剰診断や伴う生きづらさの個人病理化と投薬治療については、心理社会的な個性化との絡み合いを含め抜本的に見直す必要があるように思われます。