心理社会的支援の場で起きる変容の瞬間は、突然の閃きのアハ体験です。一気に腑に落ちる非言語的体験的了解です。こうした直観的体験を表現していこうとするところに、実感に裏付けられた自覚的な発見や創造が可能になります。
被支援者のアハ体験は、身体的な共鳴現象によって支援者にも伝わります。すると、それまで被支援者と支援者の間に漂っていた曖昧模糊とした微細な自己違和感が消失します。と当時に、両者の関係はアハ体験をめぐって共鳴的・鏡映的な共感的一致体験となり、よりクリアな関係になっていきます。また被支援者にとっては、主観的なアハ体験が、支援者とも共有可能な体験となることによって、より確証性のある体験となります。
この時、いかなる支援者の言動が、被支援者のアハ体験を促進することができるかを支援者自身が意識化することができれば、その智慧を被支援者の適切な自己の自己組織化の支援のために役立てることができます。その智慧のひとつが、支援者と被支援者との関係が共同研究的協働関係を構築し、被支援者の自己と世界の出あいの不一致・一致の繰り返しを、無批判・無評価・無解釈の立場から共創的に俯瞰するような場の構築です。
被支援者にとって、自己と世界の出あいの不一致・一致の繰り返しの体験の最前線とは、被支援者と支援者の出あいの不一致・一致の体験といえます。それだけに被支援者が自己と世界の出あいの不一致・一致の直接体験について、被支援者と支援者が安全かつ安心して共創的に俯瞰し、アハ体験の一致の体験を手がかりに、少しでも自己と世界の一致が高まる様な適切な自己を自己組織化することができるのです。