誰もが自分の“こころ”の専門家になることのできる時代

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生き方の望ましさは、時代や文化によって大きく異なります。同様に、“こころ”の病に対する考え方も古代から現代に至るまで変遷してきました。

古代では、“こころ”の病は神の怒りや妖怪、悪魔の憑依と密接に関連しており、呪術師による祈祷が救いの道でした。しかし現代社会では、科学的な根拠を持った医学的治療が一般的になりました。

しかし、現代社会では、科学的な根拠に基づいて疾病や障害を定義すれば、苦悩すら病として定義することが可能になってきました。

ひきこもり、不登校、発達性の問題すらが、一歩間違えば、医学的な治療の対象となってしまいます。

“こころ”の病とは、自己と世界の出あい不一致に伴う苦悩に対しての時代・文化による定義と、密接な関係にあると言えます。

先進国では、“こころ”の病は、ICDやDSMといった操作的定義によって診断される時代になりました。しかし、安易な操作的定義は、過剰診断と、問題の医療への囲い込み現象を引き起こす危険性があります。まだ、原因不明にもかかわらず対症療法として実施される薬物治療も極力慎重に行われるべきです。

“こころ”の苦悩を扱う心理社会的相談と心理治療(精神療法)との差違を明確にする必要があります。

心理社会的支援は、治療ではありません。

心理社会的支援は、疾病の有無に関係なく、苦悩を契機に、より生き易い人生の道を発見・創造するのをサポートするものです。

患者の疾病に対する治療が医師による行為であるならば、苦悩の解決の主体は被支援者自身です。支援者はサポーターと言えます。しかも苦悩を消去するというよりは、苦悩を契機にして、より良い人生のあり方を発見/創造することが目的となります。

そのためには、自己と世界の出あいの不一致に伴う違和感や異物感を、支援者が、既存の言葉や概念で名付けたり、解釈したり、分析することではなく、被支援者自らが言語化前の直接体験と安全かつ安心して向き合い、自己と世界の出会いの中から、より生き易い生き方を模索することを支援するような心理社会的支援の場が必要となります。

呪術師→磁気療法や催眠療法→精神分析→科学的心理治療と歴史的な歩みの次は、心理社会的支援への移行が重要と考えられます。誰もが適切な支援の場を得て、自らの苦悩と向き合うことが可能になる時代が到来してきたと言えます。