
子ども時代の虐待体験は、人間の自己価値感を根底から揺るがします。その影響は深く、自己卑下の感情や自己否定の傾向を生み出します。その結果、何か嫌な出来事が起こると、「自分が悪いからだ」と自分で自己自身を責めます。
こうした被支援者の態度を前にして、支援者は、「あなたは何も悪くないよ」と、つい伝えたくなります。しかし、この言葉が被支援者にとっては、自己否定感を増幅させるだけで、自分の存在が認められないという感情を強めてしまうことがあります。
大切なことは、支援者が被支援者の語りに対して安易に判断を下したり、意見を言うのではなく、過酷な体験の中に含まれる破壊的エネルギーに対して共に耐え忍び、そのエネルギーを転用して被支援者が新たな自己を創造していくという困難な作業に、支援者自身が徹底的に伴走する覚悟を固めることにあります。
被支援者が新たな適切な自己を自己組織化するためには、人間性の中に包含されている闇との闘いを共にするだけの両者の相互信頼と固い絆づくりが欠かせないのです。トラウマ体験を過去のものとするために最も必要な条件は、「支援者との今・現在における協働体験」といえるのです。これは、自己(部分)と世界(全体)の関係を自由無礙に俯瞰しながらアプローチするホロニカル・アプローチの核心であり、被虐待者の適切な自己組織化に向けた重要なステップとなります。