
直接体験においては、意識化よりも、その体験自体の実感や自覚が重要です。意識化と実感・自覚は全く異なる概念です。
従来の臨床心理学では、直接体験の意識化が重視されてきました。しかし、ホロニカル・アプローチでは、これを逆転させ、実感や自覚を重視します。その理由は、実感や自覚を通じた自己組織化がより自然であり、変容の速度も速いと考えられるからです。
実感・自覚とは、直接体験そのもの、すなわち自己と世界の不一致や一致の体験を、そのまま受け止めることに他なりません。このような受容が、苦悩を契機に新しい自己や世界の自己組織化を促進します。
自己の意識が先にあり、直接体験が後に続くのではなく、直接体験を意識することで自己が存在します。デカルトは前者を重視しましたが、ホロニカル・アプローチでは直接体験を重視します。自己が何かを認知したり判断するとき、直接体験レベルの体験が先行しています。神経生理学的にも、理性による知的理解や判断は、直観的な判断や了解よりもわずかに反応が遅れると予測されます。
直接体験には、自己と世界の不一致・一致に伴う苦楽が含まれています。このような相矛盾する苦楽が同時に存在するのが直接体験です。
したがって、ホロニカル心理学のABCモデルにおけるA点は、すでにB点を含んでいるという理解が適切です。瞬間にすべてが包摂されているのです。A点にはB点が、B点にはA点が包摂されています。ただし、A点ではA>B、B点ではA<Bとなり、それぞれの確率分布に差異があります。
ABCモデルを直接体験から離れて抽象的に考えるべきではありません。すべては、直接体験のみが現実的な実存的現象世界なのです。