
直接体験は、直接体験が反省されて、主観と客観、意識と存在に分裂する前の状態でありながら、同時に、主観が否定されて客観となり、客観が否定されて主観になることや、意識が否定されて存在になり、存在が否定されて意識になるという矛盾を含んでいます。自己と世界の区別がない無境界的状態と、自己と世界に分別される状態が相矛盾しながら同一にあるのが直接体験です。つまり、主観と客観、意識と存在が相矛盾しながら同一にあるということです。
主観と客観が統一されて直接体験になるのでもなく、直接体験が分裂して、主観と客観、意識と存在になるのではありません。相矛盾しながら同一のものの二面性として統一されているということです。こうした直接体験の自己矛盾的同一性は、自己が自己の直接体験を自己自身に映すことによる実感と自覚よってもたらされます。心理学は、直接体験を対象化して知的に分析する前に、まずは直接体験の実感と自覚を原点とする必要があります。