矛盾の自覚

陰陽のようにすべてが相矛盾していることを実感している人においては、相矛盾しながらも陰陽はひとつであるということが自覚されています。ホロニカル心理学的には、自己と世界の相矛盾(不一致)を実感している人は、自己と世界が同時に一致してることを自覚しているという言い方になります。

こうした認識は、「存在」を「有」とし「非存在」を「無」とし両者が対立し互いに排除するという論理である同一律(AはAである)・矛盾律(Aは非Aではない)・排中律(AはBであるか非Bであるかどちからである)を原則とする西洋の古典的な形式論理学的な思考ではついていけないものです。しかし「無」から「有」が生まれるとする東洋的思考では沢山見られるものです。陰陽の捉え方は、「タオ=道」で言われるパラダイムです。色即是空・空即是色、一即多・多即一も西洋の古典的形式論理では説明不可能な東洋で共通構造をもつ論理といえるのです。

東洋的パラダイムが腑に落ちるようになってくると、白か黒か、善か悪か、良いか悪いか、正しいか間違っているか、好きか嫌いか、身体か精神か、といったあらゆる二分思考的な対立を自由無礙な視座から俯瞰することが可能となり、そうした視座の獲得時には、苦悩ばかりに執着していた状態から「煩悩即菩提(ぼんのうそくぼだい)」と仏教がいう解放を可能とします。