神・仏の働きを感じる人の減少のもたらす影響

我の現実検討識まで失って、トランスパーソナル的な精神世界に熱狂することと、自己の脆弱性、不完全性、人格の至らなさの罪深さを実感し、トランスパーソナル的な働きによって生き方を悔い改めていくような人生を追究していくことは、しっかりと区別すべきです。

前者は、一時的な熱狂と興奮しかもたらさず、高揚した気分が醒めた時には、一気に落ち込み虚無感に陥ります。しかし、後者は、トランスパーソナル的な働きのを実感・自覚することで、自己を真の自己に向かって、適切な自己と世界の自己組織化を促進していくことができるようになっていきます。この時、自己にとって、トランスパーソナル的働きは、自己意識の発達に伴って、自己内に包摂されていると同時に、自己全体を包摂する働きとして実感・自覚されていきます。また、こうしたトランスパーソナル的働きを実感・自覚する人が増えれば増えるほど、適切な自己と世界の自己組織化が促進されます。

トランスパーソナル的な働きは、多層多次元わたる重々無尽の世界を一なるものとして統一統合する働きをもっていると考えられるのです。ホロニカル心理学では、「IT(それ)」としています。「IT(それ)」とするのは、本来、名づけることのできない働きに名をつける矛盾から生まれたコトバです。そしてホロニカル心理学では、“こころ”の働きに「IT(それ)」があると考えています。宇宙が多層化・多元化しながらも一つの宇宙であるように、宇宙を意識の場として映す“こころ”もまた、多層化・多次元化していく働きを持ちながらも、その働きと背反するようにして、統合化の働きをもっていると考えているのです。