ところ変われば

ヒンズー教を信じる人の多いバリ島では、病気には二種類あるという。ひとつは身体の病で、医者のところに行きます。もうひとつは魂の病で、伝統的な治療者であるシャーマン的高僧のところに行き、魂に憑依した悪霊を除去してもらうのです。場合によっては死んでしまった人との会話もシャーマンを通じて可能と考えているようです。

バリ・ヒンドゥー教は、バリの人たちの日々の生活に染み渡っています。万物に神が宿ると信じ、至るところにお供物や線香がお供えされています。早朝にジャランジャラン(散歩)をすれば、そこらじゅうにあるテンプルや玄関先に備えられた線香の煙で、あたかも村全体が燻されているような風景に出会うこともできます。

死は、この世の苦難からやっと開放され、あの世にいけると考え、葬式では涙を禁じて、地縁血縁者が大家族となって集い、誠に賑々しく行われます。死と生が可視化され、人々は、宗教とともに日々の生活を営んでいるのです。

そして、当然のこととして、バリ島では、サイコロジストも精神科医もあまり必要とされていません。いや、それどころか、驚くことに魂を病む人は、祭祀における神の導き手として大事に親族・家族で扱われ、生きることにさほど困っていないのです。