葛藤について

クンダリニー

葛藤という言葉から、どのようなイメージを浮かべますか?

一般的にいって西欧文化の影響の強い心理学においては、“こころ”の内に相反する2つの矛盾する欲求・動機や、人間関係における相反する心境を表現することが多いと思われます。共存できない2つの欲求・動機や状況に対して、いずれを選択するかといった心的緊張の際に用いるといえます。また、フロイトなど深層心理学的においては、心の深層から表面に出ようとするものと、それを抑えつけようとする意識と無意識との戦いを葛藤と呼びます。

これに対して、日本語としての葛藤は、同じツル科の植物である葛(かずら)や藤(ふじ)が複雑にもつれ絡む状態を語源として持ちます。仏語では、正道を妨げる煩悩、禅宗では、言語に囚われた心的状態を意味することもあり、物事の二律背反的に限らず、物事の複雑のありようを意味する面があります。

こうした言質の差異は、言葉になる以前の複雑な心境を重視する東洋的姿勢と、言葉による表現の矛盾・対立の統合を重視する西欧的姿勢の差異が影響しているようにホロニカル心理学では考えます。

そして実際の対人支援においては、言葉になる以前の複雑な“こころ”を複雑なままに直覚していくことが、“こころ”の適切な変容のためには重要なように思われます。言葉とは、言葉にならないものを言葉にするからでしょう。言葉が、言葉が表現する何かを失ってしまうと、むしろ言葉だけに囚われる生き方になるように思われます。