二つの言語

 

ケンタロウス:ギリシャ神話に出てくる半人半獣

ホロニカル心理学では、直接体験を理解したり表現したりする言語には、二種類あると考えています。外我の言語と内我の言語の二つです。

もともと外我の言語も内我の言語も原初の段階では、「一つ」ですが、歴史の歩みの中で機能的に分化し、個人の自己の発達でもそのことを繰り返しています。

外我の言語は、さまざまな出来事を引き起こしている要素を一義的に定義できるレベルまで識別・分別し解体するときに作用します。そして、一旦解体した要素間の関係性の論理を発見し、それを体系化・秩序化しようとする時にも作用します。外我の言語は、理(ホロニカル主体)の識別基準によって、帰納と演繹、解体と統合を繰り返しながら思考する論理的言語といえます。

それに対して内我の言語は、身体感覚やイメージの源泉となるような多義的かつ包括的な言語です。夜見る夢の世界のように幻想的で、呪術的で、超越的な言語といえます。

外我の言語は理性的活動に深く関係し、内我の言語は感性的活動に深く関与します。

外我の言語は科学的認識を促進し、内我の言語は芸術的象徴化を促進します。

自己と世界の出会いの直接体験を、内我と外我がいかなる言語でもっていかに受けとめるかの違いによって、個人の人生観や社会の文化の彩りが異なってきます。

ホロニカル心理学では、外我の言語と内我の言語の対話が重要と考えています。外我の言語は自己と世界の多層多次元化を促進し、内我の言語は自己と世界の一致を促進します。外我と内我の適切な対話は、外我によって多層多次元化した世界を、内我が内包的に一なるものとして包括的に統合し、内我によって包括的に統合された一なる世界を、再び外我の言語が多層多次元化を促進するという関係にあります。こうした、外我と内我の適切な行ったり・来たりが、適切な自己の自己組織化を促進すると考えています。