居場所づくりとは

心理社会的支援において、よく居場所づくりが大切といわれます。が、しかし、居場所は、どこかにあるものではなく、創り続けていくものと考えられます。しかも、Aさんにとっての居場所が、Bさん、Cさん、Dさん、Eさんにとってもよき居場所とならなければ、それはよき居場所づくりとはいえません。居場所づくりは、誰にとっても安全で安心できる場所になるようなものを目指すものでなければなりません。

居場所作りは、人と人の関係が共創的関係にある時に可能と考えられます。誰かが創るものではなく、みんなで創りあげていくものといえます。

ひとりの人の“こころ”の中には、いろいろな特性があります。Aさんの“こころ”の中には、a,b,c,d,e・・・などいろいろな特性があります。それも意識化されているものから、まだ意識化されていない特性まで考えられます。Aさんの特徴とは、そのとき、その場所におけるこうした特性の複雑な組み合わせと考えられるのです。Bさん、Cさん、Dさん、Eさんも同じように考えられます。Aさんも、Bさんも、Cさんも、Dさんも、Eさんも、みんな様々な特性を共有しながらも、そのとき、その場所における布置の差異が個性を形成していると考えられるのです。

したがって、居場所づくりとは、Aさんの内的世界のa,b,c,d,e・・・の関係の折り合いがよくなるとともに、そうしたAさんの変容が、Bさん、Cさん、Dさん、Eさんの内的世界のa,b,c,d,e・・・の関係の折り合いにおいてもよくなることを意味するものであることが大切となるのです。Aさん、Bさん、Cさん、Dさん、Eさんの外的関係の折り合いがよくなることが、Aさん、Bさん、Cさん、Dさん、Eさんのそれぞれの内的世界の折り合いがよりよくなるものであることが大切となるのです。

よき居場所とは、A、B、C、D、E・・・や、a,b,c,d,e・・・がひとつになることではありません。むしろA、B、C、D、E・・・や、a,b,c,d,e・・・がそれぞれ個性的で自律的な存在でありながら、そうした個性的存在同士が相互包摂的な新しい社会的絆を創発しあっていくような場所のことを指すと考えられるのです。

あらかじめ設定された居場所に、人を適応させようとするようなやり方では、場所に適応できる人とそうでない人を分断するだけの結果に終わると、ホロニカル・アプローチでは考えます。