当事者主体の支援とは、どういうことなのか、当事者自身の自己選択や自己決定の尊重とは、支援者がどのような態度を具体的にとることなどかを明かにしていく必要があります。そうでなければ、理念は、ただの机上の観念的な理想に終わってしまいます。
ホロニカル・アプローチでは、当事者主体の支援とは、次のようなものではないかと考えています。
当事者の自己が、自己と世界の出あいの不一致と一致の出あいにおいて、自己と世界が一致する方向に向かって、当事者自らが自己及び世界を自己組織化することができるように支援することです。問題解決の主体は、支援者ではなく、当事者自身であり、支援者は当事者の問題解決に一緒に悩み・苦労するパートナーになるということです。しかしこのとき、当事者の自己が世界と一致する方向とは、すなわち当事者と支援者が支援の場において、お互いの自己の出あいにおいて、少しでも一致する方向を発見・創造することを意味します
こうした相互包摂な相互交流による自己と世界の不一致・一致の絶え間のない繰り返しは、身体的自己レベルでは、自己と世界の不一致による自己違和感と自己と世界の一致によるホロニカル体験との行ったり・来たりといえます。したがって当事者主体の支援とは、当事者の身体的自己が、ホロニカル体験の頻度がより高まり、より持続できるような生き方を当事者と支援者が、自己違和体験とホロニカル体験の行った・来たりを共に俯瞰的しながら、より自己と世界が一致する方向を共同研究的に協働して模索することと考えられるのです。
当事者の身体的自己が、過緊張、過警戒、過覚醒状態に陥っていたり、麻痺、仮死的状態、低覚醒に陥っていたりするときには、まずは当事者の身体的自己が、安全・安心を「今・ここ」の支援の場で体感できることがもっとも重要です。安全かつ安心できる支援の場に当事者の身体的自己が包まれることによって、ほどよい緊張、ほどよい覚醒の中で、身体的自己が自己と世界の一致に向けて自ずと動きだすことができます。また支援者は、当事者の自己と世界の一致に向けての当事者のごく微細な身体的変化(頻脈の安定化、硬直していた身体が命の働きに目覚めるようして微かに動きだす等)動きを支援者が照らし返し、当事者自身が、不一致時と一致時に差異を実感・自覚できるようにすることによって、小さな意味のある変容を増幅・拡充しながらサポートすることが、当事者中心の支援といえます。
身体的自己が、ごく自然の命の歩みに向かって動きだせるようにサポートすることが、当事者支援の根幹といえるのです。