対人援助の試論

対人援助においては、一瞬・一瞬の被支援者の振る舞いに対して、支援者がいったいどのように対応していくかによって、被支援者と支援者関係が時々刻々と変容し、そうした関係性の変容を基盤にして、被支援者の言動も変容していきます。支援者は、被支援者に対して、客観的ポジションを維持し続けることはできないのです。仮に被支援者の言動に支援者自身の主観的な言動による悪影響を与えないようにと細心の注意を払いながら冷静客観的な立場から対応しようとしたとしても、それはそれで冷静客観的な態度が被支援者に影響を与えてしまうことを排除できないのです。

そもそも人に生きづらさは、その人や誰かの内にあるようなものではなく自己と世界の不一致・一致の出あいという出来事の繰り返しの中で不一致の累積という出来事によってもたらされていると考えられます。

こうした観点からすると、次のような援助理論が成立します。
「被支援者が生きづらさを抱え込み、自助努力だけでは自己と世界の不一致の悪循環ばかりを繰り返す人生からなかなか抜け出せなくても、被支援者と支援者が不一致・一致を繰り返しながらも両者がより一致する方向を求めていけることを可能とするような場さえあれば、被支援者と支援者が相互に自己と世界がより一致する体験を通じて、共により生きやすい人生の道を発見・創造できる」というものです。

適切な支援とは、支援者が被支援者に対して一方的に何かを与えるような関係を超えて、共によりよき人生を創発しあっている関係を指すと考えられるのです。