他律的内的現実主体(3):追い込まれやすい人たち

強い抑うつ気分が内我に布置し、心身とも疲労し、生きる意欲すら枯渇しかけているときに、周囲の人に、世話を焼かれたり、励ましの助言を与えられると、そうした期待にすら応えられない気分に追い込まれてしまう人たちがいます。ホロニカル心理学では、受動的内我(または他律的内的現実主体)が強い人と概念化しています。受動的内我が強い傾向にある人の外我は、社会的に流布されている一般常識(既知のホロニカル主体:理)を内在化した人がほとんどです。そのためもともと外我自身が、一般社会の常識に対して他律的な姿勢(他律的外的現実主体)が強いため、周囲からの励ましや助言を受けると外我自身が、周囲の期待にすぐに応答できない内我に対して自己懲罰的態度をとってしまうため、内我はますます抑うつ的になってしまうのです。

ホロニカル・アプローチでは、他律的な外我(他律的外的現実主体)、かつ受動的内我(受動的内的現実主体)の強い被支援者に対して、次のような技法を使ってサポートします。

まず、受動的内我と他律的外我を小物を使って外在化します。次に、小物によって外在化された受動的内我と他律的外我の対話法を実施します。すると、多くの場合、受動的内我が他律的外我に対して、適切な自己主張ができ、外我がそれを少しづつ受け入れていく限りにおいて、外我と内我の内的対象関係に適切な変容を引き起こすことができます。もし、受動的内我が、他律的外我に圧倒されがちになった場合にあっても、内我をサポートする「内的助言者」や「協働者」を小物を使って外在化するなどしてエンパワ-メントを図ることによって、相互的な対話を可能とすることができます。大切なことは、これまで他律的外我によって制御されてきた内我が、他律的外我を打ち負かすような対話では、適切な自己の自己組織化が促進されないということもあるということです。もし内我が攻撃的な自己主張に終始するようになってしまうと、内我は誇大的万能感を強め、被害者意識ばかりが強くなり、かえってその後の人生が息苦しくなります。そこで支援者側には、適切な自己の自己組織化のために、外我と内我が両者の不一致をめぐって、より一致する方向を安全かつ安心して希求できるような対話をサポートすることが求められます。