自己と世界の出あいの一致による体験(ホロニカル体験)はトランスパーソナルな開放感を伴います。しかし、トランスパーソナル的な高揚感を求めて薬物やアルコールに依存してしまう人たちがいます。しかし薬物やアルコールによる行為によって得られる体験は、真に自然で無為なホロニカル体験ではありません。
ホロニカル体験は、非自己的な異物を身体に混入してまでして強制的に引き起こすものではありません。不自然な強制は、身体的自己による抵抗や副作用を必ず引き起こし、むしろごく自然な自己と世界の一致による一致感と適切な自己組織化を阻害します。それは自己違和的な恍惚感、高揚感や多幸感を一時的に引き起こすことはあっても、薬物やアルコールによる嗜癖・依存を強める要因にもなります。特定の薬物やアルコールの活用による酔いしれた超越感は、人為的に引き起こされた神経・生理学的な作用を要因とする誇大的・万能的な内我による過集中感、高揚感や多幸感であり、外我はただ内我に他動的に圧倒されてしまうため過度な依存心を強めてしまいます。
内的世界内のみの自己と世界の一致による独我的高揚や多幸感は、幻想的で魔術的です。そのため内的世界の微細な揺らぎによる自己と世界の一致と不一致の繰り返しは、瞬時・瞬時に幻想的外的世界の不一致・一致の繰り返しとなり、世界は一貫性と統一性を失ってしまいます。
ホロニカル体験は、特定の薬物やアルコールを利用しなくても、日常生活や非日常生活における修養、瞑想、マインドフルネスや気づきの訓練などによって増幅・拡充することができます。医学的に厳密にコントロールされた薬物利用の場合にあってもホロニカル体験の増幅・拡充の併用は有効です。また、たとえ小さく短時間のホロニカル体験であっても、その増幅・拡充による実感・自覚の促進は、ホロニカル体験の出現頻度を高めることを可能とします。
ホロニカル体験は、内的世界と外的世界の一致による無境界的体験です。外的世界と内的世界に一貫性と統一性を与える基盤となる体験が無境界になるホロニカル体験です。自己が自己を超えた絶対的なる世界と一体化する全体験といえます。ただし、ほとんどの人は、いつでもどこにおいても、そうした自己超越的世界に触れていながら、瞬時のホロニカル体験に気づかず生活しています。なぜならば、ホロニカル体験時には、ホロニカル体験そのものを自覚する観察主体が「無我(現実主体の働きが無となっている状態)」となっており、実感はあってもすぐに忘却され、ほとんどの場合、自覚までに至りません。しかし、自己意識の発達が第4段階以降になると、事後的にホロニカル体験の自覚が可能になり、自己意識の発達に伴い自覚の程度が深化させることが可能になります。
ただしホロニカル体験の促進を図るためには、適切な自己意識の発達を促すようなパラダイムの大切さを共有する安全かつ安心でき、かつ社会的に開かれた場所が必要になります。