観察主体と観察対象(4):不確定性

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私たちはふつう、「何かを観察する」と言うとき、まず外側に対象があって、それを自分がそのまま見て理解している、と考えがちです。けれども、ホロニカル心理学では、少し違った見方をします。

それは、何を見ているのかは、どのように見ているのかによって変わる、という考え方です。つまり、観察対象は、ただそこに固定的にあるものとして見えているのではなく、観察主体である私たちの観点によって、その姿を変えながら立ち顕われてくるのです。

たとえば、ある子どもが不登校になったとします。このとき、「親の関わり方が影響しているのではないか」と見る人は、家庭の関係に注目するでしょう。「学校でのいじめが原因ではないか」と見る人は、教室の人間関係に目を向けるでしょう。また、「身体の不調が背景にあるのではないか」と考える人は、自律神経や体調の側面に注目するかもしれません。

このように、同じ一つの出来事であっても、見る側の観点が違えば、見えてくる問題の姿も変わってきます。私たちは「客観的に見ている」と思うことがありますが、その“客観”もまた、まったく主観的な観点を離れて成り立っているわけではありません。

ホロニカル心理学は、この点をとても大切にします。つまり、現象は「観察主体」と「観察対象」との組み合わせの中で構成される、ということです。何を問題として見るのか、どこに意味を見いだすのかは、観察する側のあり方と切り離せません。

このことは、もっと日常的な場面でもよくわかります。たとえば空に浮かぶ雲を見ても、ある人は「ゆったりしていて気持ちがいい」と感じるかもしれません。ある人は、雲の形の中に動物や顔のようなイメージを見つけるでしょう。またある人は、「水蒸気が集まってできたもの」として科学的に理解するかもしれません。見ている雲は同じでも、そこに何が見えてくるかは、人によって違います。

このように、観察主体の観点によって、観察対象の姿は変わって見えるのです。
ホロニカル心理学は、この現実から出発します。そして、心理社会的支援の実践であるホロニカル・アプローチでも、この視点はとても重要です。なぜなら、支援において本当に大切なのは、「目の前の現象そのもの」だけを見ることではなく、その現象を自分がどのような観点から立ち上げているのかを見直すことだからです。

このように、観察主体と観察対象との関係そのものを、もう一度ていねいに見つめ直すことを、ホロニカル心理学では俯瞰と呼びます。俯瞰とは、ただ広く見ることではありません。いま自分が、どのような立場から、何を、どのように見ているのかを問い直すことです。そうして見方そのものを見直すことができると、現象の意味も少しずつ変わってきます。そしてそこに、これまで見えなかった新しい理解や、支援の新しい可能性が開かれてくるのです。