対話のもつ共創的創発性

対話の価値は、ある問題をめぐって問題解決の道を模索するとき、対話の開始当初には、多様な考え方や価値観の差異に、お互いに違和感を感じあっていたとしても、対話の中で、次第に異なる問題解決の道や価値観があるという相互理解の中で、むしろ自分だけでは思いもつかなかった新たな問題解決のための道や価値観がお互いに発見・創造されることにあります。対話前に、お互いの価値をただ尊重し認めあっていたとしても、対話によって新しい価値が共創的に創発されるところに魅力があるのです。

しかし、この時、対話に先立って、多元論的不一致を統一するような道や価値観があらかじめあるわけではありません。むしろ、あらかじめあるとする人が一人でもいると対話はその人を中心にして滞ります。多様な考えを、一元論的に統合しようとするところにはむしろ対話が成立しなくなり、対立が激化することになってしまうのです。

対話の価値は、対話の場の中からある新たな価値や問題可決の手がかりが、お互いに発見・創造されることにあると考えられるのです。

創造的な対話の場所では、不一致が一致する方向に潜在的な一なるもの考えられ、不一致が顕在化する方向に多元性が考えられるようになっていきます。