子ども虐待(5):まずは物理的な安全と安心の生活の場の確保

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現在の子どもたちが安全感・安心感を抱くことのできない虐待などの過酷な状況にあるとき、既存の心理療法や精神療法だけでは効果には限りがあります。

過去のトラウマ体験に対しては、トラウマ・ケアやトラウマ・セラピーは効果的ですが、現在進行中の子ども虐待に対しては、違ったアプローチが求められます。具体的には、子どもの意思を尊重しつつ安全と安心を保障する方法が重要です。多くの子どもは保護者との分離を望まず、同様に加害者となる保護者も子どもと離れることに抵抗を示すのが現実です。

その結果、今・現在行われている緊迫する継続中の子ども虐待の最前線で求められているのは、過酷な状況にあっても、いかにして子どもの意思を尊重しながら、子どもの安全と安心を保障するという極めて困難な作業となります。

子どもに対しては、苛酷な生活環境の中でも、いかに振る舞うことが、より安全で安心できる環境を手に入れることができるかについて、子ども自身の適切な自己内省力と適切な言動を共に検討していく支援者の存在が重要になります。また保護者に対しても暴力・体罰・威圧・威嚇・否定などのパワーによる子どものコントロール以外の適切な養育のあり方が知的な理解ではなく、実際に身につくまでの根気のいる支援が必要になります。内的世界と外的世界を共に扱うホロニカル・アプローチのような心理社会的な継続的な統合的支援が必要になるのです。

支援者の最も重要な役割は、子どもにとって安全で安心できる環境を提供することです。こうした環境づくりが、虐待を受けた子どもが適切な自己を育み、将来のトラウマ・ケアやトラウマ・セラピーにおいて、クライエントとの信頼関係を築く土台となります。

苛酷な生活環境にある人にとっては、今・現在をいかに生き延びるかが中心であり、物理的な安全と安心が確保できてからが、トラウマ・ケア、トラウマ・セラピーの効果が期待されるのです。

過酷な支援現場の実態に対して、診察室・面接室・研究室・実験室などで支援を行う専門家はもっと目を向けるべきです。過酷な現場で奮闘する支援者に対して、専門性が足りないとか治療的でないという批判は避けるべきであり、むしろ彼らの貢献を評価し、支援していく姿勢が必要になると考えられるのです。