疾病・障害の意味

ホロニカル・アプローチは、心理・社会的支援法です。そのため精神医学で一般的に行われる「DSM5」や「ICD-10」といった精神疾患の診断・分類基準によって、精神疾患や発達障害を診断・分類し、その診断・分類に従って治療をするという治療的パラダイムとは異なり、むしろ診断を下す時の基準とされた症状や問題という現象自体が、一体どのような経緯によって持たされたかについて、当事者自らがし自己の人生上の出来事として実感・自覚的に物語れるようになることを重視します。

通常、心的(精神的)症状や問題は、強い自己不一致感や自己違和感を自己にもたらしています。しかしそうした出来事でも実感・自覚的に物語ることができるということは、自己不一致や自己違和的出来事を自己自身に統合し自己親和的なものに変容させていくことを意味します。すると、その結果として症状や問題によってもたらされていた苦痛が和らいだり、場合によっては消失するという現象が起きてきます。

苦悩自体は問題ではなく、避けることもできない直接体験といえます。大切なことは、苦悩をどのように感じ受けとめ、どのように生きていくかによって、人生の歩み方が大きく違ってくるという事実です。

ホロニカル・アプローチの視点に沿って言い換えれば、自己と世界の出あいの不一致体験を、外我と内我が適切な対話軸を形成することによってあるがままに受け止め、自己と世界がより一致する方向の外我と内我の関係を見定めていく契機として扱うことになります。

苦悩は新しい人生の生き方の発見・創造の契機として積極的に扱われるのです。