トラウマの扱い方(4):過去の体験を過去のものとする

強烈なトラウマを負った人たちは、過去のエピソードを想起する時、あたかも今・現在がいまだ過去のままであるかのような怯えた語り口や仕種となるか、逆に、あたかも何でも無いかのような硬直した語り口で淡々と語ったりします。

過去の強烈な辛い体験が、現在の自分の体験を歪めたり、奪ってしまわないようにするために、過去の記憶を加工、歪曲、否認、隔離したりと、あらゆる自己防衛機制をフル活動させているのです。しかしその代償として、今・この時を生き生きと生きられなくなったり、失感情的になったり、能面になったり、時間感覚を失ったり、世界にベールがかかったりしがちになります。こうした反応は意識的なものというよりも神経生理学的レベルでの生命保存のための自己防衛能力が自動的にスイッチオンしてまっていると考えられます。

そこでトラウマを扱う時には、過去の記憶と体験を傾聴すること以上に、面接中のクライエントにトラウマに伴い現象が侵襲してきたとしても、まずは、今・現在は、絶対に安全と安心できるという体験を徹底的に体感できるように配意することが最も重要となります。