個的存在と超個的存在としての自己

人間の自己は、個的存在としての性質を持つばかりではなく、言語を持ったことによって個的存在を超越することができます。自己は実際に経験したことばかりではなく、言語を介した情報や知識を通して、自己を超える存在について思考し、想像し、意識し、感じとることができるからです。

自己は、個としての“こころ”の働きばかりではなく、個を超越する“こころ”の働きをもっているといえます。こうした個を超越する機能があるからこそ、自己は世界との関係において、根源的には一であることに目覚めることができるのです。

有限の唯一のかけがえのない個的存在である自己が、世界と根源的にはつながっており、一であることの実感・自覚は、自己に救済をもたらします。自己のもつ自己超越的機能に気づかぬ自己は、個的存在の有限性や孤立性に苦悩しつづけることになります。