交互法と差異の明確化

三点法モデル図

心的外傷となった出来事が陰性の身体感覚や記憶表象となってこびりついてしまうことがあります。こうした時、不快感を取り除こうとして様々な自助努力を図れば図るほど、場合によっては、観察主体が心的外傷体験から適切な心的距離をますます取れなってしまいます。こうなると観察主体は視野狭窄的になって、ますます心的外傷体験の世界に取り込まれ、まさにドツボにはまり陰性の心的症状は増悪化します。

こうした悩みを抱える人に対して、次のような対応(交互法の実施と差異の明確化)で心的症状が軽減化することがあります。実施の場において、被支援者と支援者の間に共同研究的協働関係が成立していることが条件になります。
①最初に、あえて強烈な心的外傷体験を想起(言語化の必要はありません)してもらい、その時を「0~10段階」の「最悪の10」と基準点とします(スケール化法)。
②次に心的外傷体験以外の観察対象を観察するように促します。「窓の外には何が見えますか」「この部屋で何かお気に入りのオブジェでもありますか?」「あの振り子時計の振り子を20秒ほどただ観察してみてください」などを観察対象の切り替えを図ります。「とても心地よかった体験」の想起を促しても良いでしょう。
③新しい観察対象に十分に観察主体の意識が切り替わったと思われる頃合いを見計らい、「さっきの10は、今・この瞬間はいくつになりましたか?」と質問します。すると、多くの場合、新しい観察対象を見ている時の直接体験が心的外傷体験時の神経・生理学的状態に干渉するかのようにして、「8」とか「7」と数字が下がります。
④②~③を数回繰り返します。
⑤すると、心的外傷体験の浅い場合ほど、多くの場合、急激に数値が下がっていきます。
⑥改めて、心的外傷体験の想起時の直接体験とそれ以外の観察対象を観察している時の直接体験の差異の実感・自覚の促進を図ります。
⑦すると過去の心的外傷体験と、「今・ここ」における直接体験の区分が明確化し、開放感を体感することが可能になってきます。

※もし万が一心的外傷体験が増悪化した場合は、慌てず、交互法を中断し、深呼吸しながら、落ち着くものをボッーと眺めるようにするとよいでしょう。