不自由即自由

鈴木大拙

東洋的な見方、特に仏教には、煩悩即涅槃といった絶対に矛盾するものを同一に見る考え方があります。しかしながらこうした考え方は、近代科学の根拠となっている西欧的ま二元論的対立に基づく弁証法的な因果論的論理だけでは、理解が困難といえます。

鈴木大拙が浄土真宗の僧侶ではない在俗の信者を指す「妙好人」の次の言葉を引き合に出して、こうした感覚をわかりやすく説明しています。
「阿弥陀さまよ、どうぞ自分の煩悩を皆、とってくださるな、これがないと、あなたの ありがたさが、わかりませぬ」

煩悩に苦悩する「不自由」のなかに、「自由自立」のはたらきを発見する、否定の積極的肯定といえます。

ホロニカル心理学も、自己と世界の不一致にこそ一致に向かう創造的な働きをみます。不一致即一致、一致即不一致といえるのです。