自己愛と他者愛

自己が自己自身に一致を求めることには、さほど努力はいりません。特に自己が、他者からの呼び声に全く耳を傾けず、自己自身が求める幻想的な理想に一体化し浸り切ってしまえばことさらのことです。

しかしながら自己が、絶対的に自己でない他者の存在に気づき、その他者を求めた途端、自己愛と他者愛をめぐる孤独で熾烈な葛藤に自己は悶々とします。

この時、自己と他者同士が共に絶対的な他者に開かれた関係にあることに目覚めると、愛と孤独の苦悩から救われます。なぜならば、こうした瞬間には、自己愛や他者愛の力を超えた力、すなわち各々の自己が自己自身を失い、自己と他者を超えた次元で一となることが可能になるからです。