実利的対話と了解的対話

現実の利益を追求する「対話」と相互の内的了解を促進する「対話」では、「対話」という言葉は同じでも意味は異なります。

変化が加速度的社会の現代社会においては、相互の内的了解を図る時間は、非効率的と排除されがちです。しかしながら内的了解なき迅速な決定は、人と人の関係を分断していきます。

伝統的社会では、暗黙の了解が、一堂に集う場において働きました。暗黙の了解は、村落共同体の紐帯を象徴したのです。それによって人と人の分断を避けていたといえます。しかし、現代的民主主義が浸透していく社会になればなるほど、価値の多様化と多元化の中での暗黙の了解は困難となり、実利的対話と了解的対話が機能的に分化してきました。

こうした中で、いかなる対話が、もっとも自己と世界(他者)の出あいの一致をより促進するのかというテーマが心理社会的支援でも問われるようになってきました。

この点に関してホロニカル心理学では、不一致・一致の繰り返しの中で、自ずと一致する時のパターンが少しづつ浮かび上がってくるというところに、新しい対話の可能性を発見・創造しようとします。心理社会的支援においては、理念や信念の対話ではなく、具体的な事例(支援の対象となる当事者の抱える苦悩)に対する当事者参加型の共同研究的協働関係の共創の中で、新しい道が自ずと局所的に発見・創造され、その変容が多層多次元なテーマの変容につながっていくと考えているのです。