歴史・文化の深化

歴史・文化は、本来全一的な自体が、重々無尽に相矛盾し対立しあいながらも同一性を求めあっていくという深化の方向に向かって展開していくものであって、直線的・統一的に進化していくような展開にはなりません。歴史・文化が統一方向に向かうというのは、考え出された理念・理想であっても現実の展開とは異なります。

科学的知識や技術は、抽象的形式論理による弁証法的展開によって直線的統一的に進化していくように思われます。しかしながらそれは、実在する世界の情念的で感性的なものをそぎ落とした考え出された極めて限定的世界に過ぎません。科学の論理手続きの中には、生と死、愛と憎悪、善と悪が対立しながら同一に展開するような因果論的には展開することなどない非合理的なものを一切切り落とした論理の世界といえます。実在する世界はもっと複雑で非合理的なものを含んでいるといえます。

過去を含み刻々未来が開かれてくる今・現在において、過去と未来が対立しながらも自己と世界の出あいがより一致する関係を深めていこうとする時、感性的なもの理性的なものを含んだ新たな歴史・文化が創造されると考えられるのです。