ほどよい支援

自己と世界の一致の統合化を促進する原動力は、自己自身のうちにある自己組織化能力にあると考えられます。

したがって、適切な心理社会的支援とは、潜在的な自己組織化能力を顕在化させる働きといえます。

自己組織化能力を促進させるものは、被支援者の自己と世界の不一致・一致の直接体験への支援者による一致の体験です。この時、気をつけなければならないことがあります。被支援者と支援者が、ただ単に一致し仲良くなるだけでは、決して被支援者の自己組織化は促進されないということです。被支援者の自己組織化は、被支援者の自己と世界の不一致に対しても、支援者がほどよい協働的な共創的観察の立場から一致する時に促進されるのです。

自己組織化を阻害する要因は、自己と世界の不一致の累積による自己違和体験への観察主体の執着的固着です。こうした自己違和体験自体は、普段は、抑圧されたり、隔離されたり、否認されたりしています。しかし、一度、自己違和体験が刺激されると、神経生理学的なネットワークが発火し、人は自己違和体験に強迫的に執着してしまいます。こうなると人は、自力で抜け出すことは難しくなり、被支援者による共創的観察の立場からのほどよい距離を持ったサポートが大切になります。被支援者の自己と世界の不一致・一致の行ったり・来たりを、ほどよい距離から観察し、共により生きやすい人生の道を発見・創造することのできる共同研究的協働者が、ほどよい支援者といえるのです。