個(部分)と集団(全体)

自己の内には様々な部分があり、それらが統合されていくことによってより全体的自己になることができるという考え方があります。ホロニカル心理学でも同じように考えます。

通常、私たちは、自己のある特性だけに意識のスポットを与えており、残りの特性は、抑圧されたり、否認されたり、切り離されたりしています。もっというならば、意識のスポットすら一度もあたったことのない特性を無限にもっているものです。また、抑圧されたり、否認されたり、切り離された特性が否定的な性質の場合などには、自分自身がその特性を意識してないために、そうした影の特性を他者に投影することが多く、人間関係がぎくしゃくする元凶ともなっています。

そこで統合化を促進し、より全体的自己に近づくためには、周辺化された特性(部分)と意識のスポットのあたっている意識化された自己との間での対話を促進することが大切になってきます。ホロニカル・アプローチの「スポット法」は、その典型的な方法です。

個人に対するこのような考え方は、集団やグループなどにも応用することができます。

集団やグループはどうしても主流派がマジョリティーとなってその場の権力を支配しがちになり、マジョリティーの中でも最も主流派の意見を象徴する発言権の最も強い者(達)がヒエラルキーの頂点に立ち決定権を握ることになります。その結果、マイノリティーは、マジョリティーによって抑圧されたり、否定されたり、切り離されたりして、中心部から周辺化されます。

こうしたヒエラルキー的構造が、固定化し、流動化を失い、しかも権力が一部の人たちに集中しはじめると、マイノリティーとされてきた人々の不満が高まり、やがて、既存のヒエラルキー構造に疑問を抱く人たちによって、新しい秩序改革が起きることになります。

この時、改革を少しでも激情化せずに進めようとするならば、次のような支援が大切です。マジョリティの立場にある人においては、自らの立場のうちに知らずのうちに周辺化してしまっている内なるマイノリティーの声に自ら耳を傾けることです。逆にマイノリティーの立場にある人たちにおいては、自らの立場のうちに知らずのうちに周辺化してしまっているマジョリティーの声に自ら耳を傾けることです。そうした作業をもし安全で安心して可能とする場さえ保障されるならば、マイノリティーの声とマジョリティーの声といった多声的な対話の中で、新しい価値基準に基づく秩序と構造を創発する可能性を高めます。