個の中の集団、集団の中の個

「この人(この子)が、今・一番の問題の人(子)だ」と、よく言われますが、本当にそうなのでしょうか。むしろ個の問題以上に、<この人(この子)が、場所のもっている問題や混乱を、一番背負ってしまっている>という言い回しの方が、より問題を的確に表現していると思われます。

ある人の問題には、ある人を取り囲む、過去及び、今・現在が抱えている問題や未来に関する問題などの一切合切が映され、しかも、ある人は、そのすべてを本人もほとんど無自覚のうちに抱え込んでしまっているのではないでしょうか。

一人一人の問題は、みんなの問題であり、みんなの問題は、一人一人の問題なのではないでしょうか。そう理解する時、たった一人のためにする行為であっても、みんなのためになり、みんなのためにする行為は、一人一人のためになるといえます。

たった一人の人でも排除する場所は、いずれ次の人を排除し、その場所には、その場所に生きることに怯える人ばかりにするのではないでしょうか。

すべてを個の問題に帰する風潮を毅然として拒絶し、ひとりひとりが場所のもつ問題を直視することから、再スタートすべきと考えます。

個と集団の関係は二元論的関係ではなく、個の中には集団の問題が包摂され、集団には個の問題が包摂されていると考えられるのです。