即興劇としての人生

人生の未来は、制限された環境の中で、偶然の出来事が重なりあいながら不可逆的に時々刻々決まっていきます。

人は移動しようとするとき、鳥のように自力で飛ぶことはできません。また東西南北のいずれかの方向に移動できる可能性は、物理的環境によって制限されています。しかし制限された環境内でいずれかの方向を選択して移動したとき、移動先でどのような出来事に遭遇するかについては、予測不可能であり偶然性に左右されることになります。

自分の道の選択が、その後、事故に出会って人生を終えることになる運命となるか、その後の人生に死ぬまで大きな影響を与える人に出会うことになるかは、あらかじめ決定論的法則によっては予測できないのです。しかし、まさに制限の中での選択の自由にこそ、自由意志が働くと考えられます。不自由の中に自由が包摂され、自由の中に不自由が包摂されているといえるのです。

人生とは、必然性と偶然性が複雑に交錯する出来事といえます。一見、毎日、同じ因果律に支配され機械的反復に思える出来事も、厳密には、二度と同じ瞬間のこない瞬間・瞬間の出来事の中で、自らが次の瞬間を選択し、そのことが未来に影響しているところに生きているといえるのです。

人生は、必然の中に偶然が包摂され、偶然の中に必然が包摂された即興劇といえるのです。