当事者中心の支援(1):共有可能な生きづらさ

当事者のニーズに添った当事者中心の支援とよく言われますが、当事者自身が自らのニーズを自覚していなかったり、錯綜し混乱していたり、たとえ実感していても、その感覚をニーズとして支援者に上手く伝えることができていないことが多いものです。

その結果、当事者のニーズが曖昧なまま支援者が「あなたの為」と称しながら支援者の論理から被支援者の状態を見立て、支援者の馴染みのある支援方法によって、当事者を支援しているのが心理社会的支援現場の実態ではないでしょうか。

ホロニカル心理学では、当事者であろうと支援者であろうと、自己というものは、場所の持つ一切合切の矛盾を自己に映し、かつ抱え込んでいると考えています。

こうした考え方からすれば、当事者のニーズの掘り起こし作業や明確化の作業とは、生きる場所を共有する支援者自身にとっても、類似条件が重なれば、同じニーズを抱く立場になり得る作業となります。この観点から当事者の生きづらさを支援者も共有することが可能となるとき、ニーズとは、当事者の中から沸き上がるというよりも、支援者の対話の場の中から浮かび上がってくると考えることができます。

当事者のニーズが支援者にとっても共有可能なニーズとして支援のに浮かびあがってきたならば、次のステップは、当事者の抱えている生きづらさが、少しでも生きやすくなる道を、当事者のニーズに添った対策を当事者と支援者が共同研究的に協働関係を構築して取り組む段階になっていきます。こうした流れになるとき、当事者のニーズに沿った当事者中心の支援とはじめていえます。

当事者と支援者が、当事者の抱える生きづらさを共有し、少しでも生きやすくなる道を共創していくのが当事者中心の支援といえます。