相談と治療は、一見、同じようなものと誤解されがちです。しかし両者は、まったく異なる行為です。
相談を広い意味で捉えるならば、確かに相談の結果として、症状の消失や軽減の現象が見られる限り、治療的要素が含まれるとはいえます。しかし、それは結果論であり、両者の行為が本質的に異なることには何ら変わりありません。それだけに、相談か治療かと同列レベルで選択を迫られたときには、実は両者は本質的に異なるものであることを十二分に理解して選択すべきです。むしろ2者選択よりも、それぞれの行為の限界を踏まえて上で、必要に応じて両者を柔軟に使い分けたり、場合によっては併用した方がよいといえます。
根本的差異は、治療は、治療を受ける者と治療をする者という関係において成立する行為であることに対して、相談は、相談をしようとする者と相談を受ける者との関係において成立する行為ということにあります。治療行為の主体は治療者であり、相談行為の主体は相談者自身であり、治療と相談では、行為の主体が逆向きになっているのです。
相談は、○○に相談をしたいという相談をする者による主体的意志によって成立する行為です。このとき、確かに問題を抱える当事者自身に相談意志が強い場合と弱い場合がありますが、相談は、被支援者自身の相談するという主体的行為からスタートすることには変わりがありません。したがって、ひきこもり状態にあるが相談意志を示さない我が子のことで相談機関に親が尋ねてきた場合は、支援者は子どもに何らかの働きかけをすることはできても子どもが相談意思を示さない限り相談関係は成立せず、むしろ子どものことで困っている親に相談意志があれば、親との相談関係を形成することの方が大切になるといえるのです。
相談は、相談したい被支援者自身の意思と、相談を受ける支援者との相互合意に基づく共同研究的協働行為(共創的行為)といえるのです。
それに対して、治療は、治療をしようとする者の意思と決断という責任下によって行われる行為です。そのため治療をはじめるにあたっては、治療者は治療計画をあらかじめ患者に十二分に説明し、患者の合意を得る必要があります。治療行為は、メスを入れる手術に象徴されるように、外部からの操作による行為だけに、医行為として医師免許を有する専門家の独占行為になっているのです。それに対して、相談行為は、誰でも行える行為といえるのです。