解離・否認の扱い方

自己にとって、あまりに強烈な衝撃や激しい陰性感情を随伴させるようなエピソードは、自己が自己自身を自己防衛するために、神経生理学的にエピソード記憶ごと自己意識から切り離してしまうことがあります。しかしながら解離、否認による弊害として、失念、失策行為、失行、夢遊病的言動、心的遁走、記憶喪失などの症状を引き起こすことがあります。

こうしたトラウマ記憶を扱う場合には、安易に引き金になったエピソードに直接焦点化して解離・否認されたエピソード記憶を意識に統合しようとするのではなく、まずは日常生活に支障をきたしているような症状行動に対して、より適切な具体的な対処方法について共同研究的に取り組むことが重要となります。このとき、共同研究の協働の場が、徹底的に安心かつ安全であるとともに楽しい場であることが重要ポイントとなります。

強烈な陰性感情を随伴するトラウマ体験は、全体的自己から、切り離され、断片化し、しかも自己の記録から否認・抹消されています。しかし、安全で安心できる楽しい体験は、想起されやすく、より生きやすい人生の自己組織化を著しく促進することが可能となります。こうした現象は、恐らく内受容器(固有感覚を含む)と外受容器をめぐる神経・生理学的反応の深い結びつきがあると思われます。

日常生活に支障をもたらしてきた症状に適切に対処できる有能感や自信を獲得できるようになると、解離・否認せざるを得なかったトラウマ記憶に耐えられる力が獲得されるからこそ、今・現在の自己へのエピソード記憶の統合化が可能になります。