トラウマの扱い方(7):心理・社会的ケアの必要性

罵声、否定、威圧、暴力など一方的なパワーによる不適切な養育者からなかなか子どもが抜け出すことができないのは、圧倒的な力を持った養育者と争うよりも、自らが愛されるに値しない存在だと自己否定的に服従する方が生き延び策になってしまうためです。

その結果、すべては自分が悪いからこそ起きている出来事として受け止めるか、あるいは自分のトラウマを否認し憤怒し、常に外界に対する敵対心や警戒心を露わにします。

パワーに基づく支配的人間関係や、不信・警戒心を抱くことが当たり前のこととして受け入れられてしまっているのです。

しかしながら、こうした過酷な当事者の人生の目撃者の立場となる支援者は、彼らの示す様々な症状や問題行動が、不適切な扱いという過酷な状況の中で生き延びるために身に付けてきた自己防衛的な対処法でもあったと、そのうち思い知るようになります。

そして支援者が、苛酷な環境にもかかわらず生き延びてきた彼らのレジリエンスに畏敬の念を抱くとき、まさに彼ら彼女らはサバイバーとしての自己に気づき、生き直しともいえる支援者の適切なサポートによってエンパワ-メントされ、主体感を回復したり樹立し、もっと適切な対人関係をはじめて獲得しはじめいくことが可能になります。

支援者による適切な心理社会的支援によって、健全な主体を回復したり、自立できる人が沢山います。しかし、それにも関わらず彼らの実に多くが、個人病理や反社会的行為の観点のみから、疾病・障害などの精神医学の対象となったり、矯正教育の対象になるなど、個人病理化されるなどして、一生投薬治療や社会から隔絶して施設で人生のほとんどを費やすことになっているのもまた現実です。そしてその経済的負担は実に莫大なものになっているのです。

彼らには、医学的治療だけではなく、心理社会的な適切な対応が求められるのです。