深い面接とは

カウンセリングや心理療法でよく言われる「深い面接」とは、深層心理学的な意味で「深さ」を問うというテーマではなく、被支援者の観察主体が被支援者自身の自己と世界の出あいの直接体験にどれだけ濃密に触れているかどうかで判断する方が実践的と思われます。

深さは、自己の底にあるのでなく、自己と世界の不一致・一致の直接体験そのものがどれだけ実際に豊かかどうかにあるといえます。自己意識の発達段階でいえば、自己意識がどこまで深化しているかどうかにあるといえます。

また西洋の意識の中心点である我を重視する深層心理学的な自己の底は、魑魅魍魎の跋扈する暗闇という捉え方をしているのに対して、無我を重視する東洋、特に日本の禅などでは、自己の抜けたところは、そのまま生死のこの世に往還するという捉え方をしていると思われます。その結果、前者の観点では自己の底を恐れ、後者の観点では自己の無底の底が、そのまま生死のあるがままのこの世の世界に戻るといえます。