共感の影(2)

周囲の人が共感してくれないとクライエントが訴えるとき、対人援助職の人だけがいつもその苦しみに対して、共感的態度で対応することが果たしてクライエントのためになるのか、共感の影のテーマを考えてみるだけの価値があります。

と言うのは、常に共感をしてくれる援助を体験すればするほど、クライエントが対人援助職の人以外の他者との間での共感不全の感覚をかえって高める結果につながるという問題を避けて通れないからです。

自己と他己との関係は、たとえ親子とはいえども、身体的自己まで共有できなきお互いかけがえない分離・独立した存在です。人は誰もがひとりで生き抜き、ひとりで死に行くしかない孤独を抱えているといえます。誰もがこの孤独に耐え抜くしかないといえます。

この現実に直面するとき、対人援助職はクライエントがこの孤独に耐えられるような支援を果たして促進できているかどうかを、常に倫理として自らに問う必要があります。