フレームワークへの関心

ホロニカル・アプローチでは、観察主体と観察対象(自己及び世界)の関係によって影響を受ける直接体験の感じ方や認識の仕方について理解を深めるとともに、被支援者の観察主体と観察対象との不一致・一致をめぐる刻々の変容プロセスそのものに関心を払います。

このとき、いかなるフレームワークが、より被支援者の観察主体と観察対象の不一致がより一致する方向に向かって自己組織化を促すかに最大の注意を払います。被支援者の直接体験の感じ方と理解の仕方の特徴に関心を向け、その特徴を共有し、いかなる観察主体と観察対象の関係を構築すると、より被支援者の適切な自己の自己組織化を促進するかについて共同研究的協働関係を構築しながら取り組むわけです。

たとえば、被支援者が強い外傷体験など、特定の違和感や不快感を伴う過去の体験や類似体験に過敏になり、近視眼的になり、視野狭窄的になってこだわり続けているとします。こうした時の被支援者の語りはとても執着的です。そこでこうしたときには、支援者は被支援者の心的外傷に伴う苦悩に共感的に応答しつつも、被支援者の観察主体が、<嫌な出来事ばかりにすっかりと呑み込まれてしまっているようだ>と、フィギュアの頭を壺の中に没入させるなどして外在化し、被支援者の観察主体が、特定の観察対象となっている出来事(外傷体験)から適切な心的距離を取ることができなくなっている状態を、被支援者自身がほどよい心的距離から俯瞰できるようなフレームワークに心がけます。

観察主体と観察対象の関係のプロセス自体を、適切な距離をもった新たな観察主体から俯瞰できるようにすることによって、別の次元からの被支援者の観察主体の樹立を促進したり強化することを可能にするわけです。

被支援者の自己と世界の不一致体験である心的外傷体験に、ただ傾聴し共鳴的に応答しているだけでは、ますます被支援者の執着を強める危険性があります。そこで、被支援者の自己と世界の不一致体験の苦悩を、支援者がそのまま支持的に共感的に応答しながら包み込みながらも、被支援者とともに苦悩自体を対象化して共に抱え込めるようにしているわけです。こうしたフレームワークが上手くいった時にはじめて、被支援者は苦悩に耐え忍ぶ力や、そこから抜け出る方法を発見・創造することができるように変容していきます。